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2024年12月31日火曜日

祝(9ヶ月前に)博士修了

ご無沙汰しています.前回ブログを書いてからいつのまにか丸一年も経ってしまいました.
表題の通り,2024年3月に博士課程を修了したことを記念して博士課程を振り返っていきたいと思います.

なぜ9ヶ月も経ってからこんな話をしているのかというと,今月になって(本当は博士課程のうちに出しておくべきだった)論文 が出版され,ようやく区切りがついたからです.
……というのはウソで,シンプルに筆不精で書くのを忘れていたのを年末休みになってやっと思い出したからです.

さて,博士課程についていくつかに分けて振り返っていくのでお付き合いください.
個人的には博士課程に満足している(があまり人には勧められない)という話と,博士卒でアカデミアに進まないパターンの道についての話です.

博士進学について

以前 にも書きましたが,私が博士課程に進学したのは修士課程が消化不良だったからという若干後ろ向きな理由でした.
こんなナメた12学生を受け入れてくれた指導教員のH先生には感謝してもしきれません.

当時は先のことを何も考えていなかったので資金の当ても立てていなかったし,学振DC申請も出していなかったので,たまたまSPRING-GXで研究奨励金を貰っていなかったら3年間,精神的に保ったかどうか怪しいです.
研究に関しては好きなことをやっていられたので修士と比べてむしろ気が楽でしたが,同期のほとんどは既に社会で活躍しているという事実は如何ともしがたいところがありました.修士の分の蓄積が無い分,3年で終われる自信がなかったこともあります3.
奨励金(とRA)で一応生活できるだけのお金を貰っていることを拠り所に一端の研究者のつもりになることでなんとか心を保っていました.
行き当たりばったりが偶然生き残っただけなので,私の経験からは博士進学を人に積極的に勧められないところがあります.

研究内容について

私の博士論文の主題はベイズ統計によって物性研究を効率化するというものですが,なぜこんなにふんわりしているかというと2つの研究を後付けでがっちゃんこしているからです.
当初やっていた研究は,修士時代にやっていた実験データ解析に統計力学が由来の最適化手法を適用して,合理的でバイアスのない推定を実現させるというものでした.
これだけだと博士の研究としてボリュームが足りないということと,途中でH先生に共同研究を繋いでいただいて始めたマテリアルズ・インフォマティクスの研究が面白くなってしまったため,手法もターゲットもかなり開きがある2つのテーマに共通点を設定してなんとか一本にまとめたという感じです.

毎度計画性が無くてびっくりしますね.修士からもガラッと内容を変えているので3年で本当に終わるかどうかと言っているクセに緊張感が感じられません.
ただ,色々と手広くやることが出来て自分は楽しかったので結果的には満足しています

就職活動

研究は苦ではなかったと言っている割に結局私は一般企業に就職しました.
理由はアカデミアでの(狭義の)研究以外の活動が苦だったからです.

以前から薄々察してはいたのですが,決定打は学振PDの申請書を書いた3年目の春のことでした.
私は確定事実ベースではない予定の話を(しかも自分で)良いように書くことや知らない人と定型のない交渉をすることがものすごく苦手なんですね.
PDでは(DCと比べ)特に研究室外の受け入れ先を探さないといけないのでまさに一番嫌いなことをする必要があり,この期間,研究の進捗は本気でゼロでした.
アカデミアでは定期的にこれを繰り返さないといけないという事実,それと比べて就活はものすごくあっさり進んでしまったこと4によって完全に心が折れました.
また,マネジメント能力も壊滅的なので,将来学生を受け持って指導できる自信が全く無いという問題もあります.

PD申請でも色々とお世話いただいたH先生に対しては非常に心苦しかったのですが,無事(?)学振にも落ち5踏ん切りがついたのでその後のアカデミア就活は諦め,内定を貰っていた現職に進むことを決めました.

卒業後の研究活動

アカデミアでの就職を諦めたとはいえ,研究活動自体は好きなので日曜研究として続けるつもりでいました.
特に博士後半でやっていたマテリアルズ・インフォマティクスの研究はプログラムをパッケージ化して一般利用できるようにするところまでがゴールと考えていたので,その点で全く完成しておらず色々とやるべきこと・やりたいことがありました.
たまたま御縁があり6共同研究先にリモートのパートタイム勤務で採用していただき,給料をもらいながら研究開発を続けられています7.

また,これは嬉しい誤算8ですが,本業でもかなり研究寄りの業務を担当させてもらっており,業務で論文を読んだり直接プロダクトにならない開発をやらせてもらったりしています.
実績のない新人をこれだけ自由にさせてもらっているのは東大博士の肩書きによって信用を上積みされているのが感じられ,博士号様々です.(流石にいつまでも結果を出さなければバフもいずれ切れるだろうのでプレッシャーはありますが.)

総じて,博士課程の最中も,修了後の今もやりたいことがやれており,楽しくやっています.
機械学習研究の実績や共同研究の縁は修士卒時点では無かったものなので,博士進学はプラスになったと言えると思います.

ただ,このプラス要素って全部偶然要素が強いんですよね.
副業ができたのは色々と条件が噛み合ったから9ですし,ここまで経歴を買ってくれる現場かどうかって就活時点ではなかなかわからないので.
人生万事塞翁が馬とはいいますが,博士の経験を一般企業でも活かせる"分ぶ"がもっと良くなっていくといいなと思います.


  1. 動機も動機だし修論の出来はカスだしその内容からも全然違うことをやりたいと言ってるし面談はすっぽかしてくるどう見てもヤバい奴でした ↩︎

  2. そういえばちゃんとネット上で言及していなかった気がしますが,博士進学の入試面談の日程を覚え間違えていてすっぽかすという大ポカをやらかしています ↩︎

  3. 4年はかかってもしょうがないつもりでいたので,収入の1/4を貯金して4年目は貯金だけで生きていける計画でした.お陰で住環境が犠牲になりました. ↩︎

  4. 自分で言うのもなんですが(これは第三者から確認できる事実なので言えるんですが)東大博士卒でプログラミングがそれなりにできて機械学習の経験がある人間なので,企業の求めるところを汲めれば(今のところ)そうそう食いっぱぐれないと思います. ↩︎

  5. 自分でもこんなのが通るわけ無いという申請書の出来だったので実はその前に内定承諾してしまっていたのですが. ↩︎

  6. ちょうど今年後からこの形式の勤務が可能になり,これがなければかなり厳しいところでした ↩︎

  7. おかげで入社と同時に副業申請を出すナメクサった新卒が爆誕しました ↩︎

  8. 一般企業の研究専業でないエンジニア職なんてどうせ定型業務ばかりで直接「役立つ」こと以外やらせてくれないものだと思っていたので,程々に生活費を稼いで研究欲は休日に満たすくらいの心持ちでいました ↩︎

  9. そもそも就活のときは副業可能かどうかもあまりちゃんと確認していませんでした ↩︎

2023年10月29日日曜日

韓国に行ってきた

10/24~27に韓国で行われたシンポジウムに参加してきました.

参加したのは The 7th Asian Materials Data Symposium (AMDS 2023) という材料開発のためのデータ活用に関するシンポジウムです.アジア各国の材料科学研究所が隔年で開催しており,今年は韓国のMOTIE(日本でいう経産省)が主催,会場は大邸(韓国南部のちょっと内陸にいったところ)の空港から30分ほどのホテルでした.
私はちょうどMaterials Informatics1関係の研究をしており,共同研究しているNIMSの方の声をかけていただいて参加することになりました.
現地でclosedな話なので研究内容には触れず,感想を書いていきます2.

会議の話

  • なかなか良いホテルで,食事も美味しかった.日中韓折衷みたいな定食で,韓国パートは辛くて食べられなかったけど.
  • Zoomやメール越しだったNIMSの方々と直接話ができて楽しかった.
  • 英語力は全然足りていなかった.発表を聞く分には資料があるので何となく分かるけど,質疑はGoogle翻訳に頼り切りだった.流石に酷いのでもうちょっと頑張りたい.

旅程の話

  • (正式な3)国際会議に参加するのは初めてだったが,ぼっち参加だったので現地にたどり着くまでめちゃくちゃ緊張した.
    • 余裕がないってのにパスポートをなかなか取りに行かなかったので獲得したのが出発の2日前だった.あぶない.
    • これまでほとんど飛行機にも乗ったことが無かったのに,今年に入って3回4も飛んでいてびっくり.
  • 韓国はGoogleマップがよわよわなのを知らなかったので,ルート通りにバスに乗ったらホテルに向かって川の対岸に降ろされた.橋からも遠く,3泊4日の荷物を担いで1時間くらい歩く羽目になった.
  • バスやホテルで思った以上に英語が通じない.ウェアー?とかチェックイン,オッケー?のレベルで?って顔をされる.「日本人は英語力が弱い」みたいなdisをたまに見かけるが別に日本だけじゃないじゃんという気持ちになった.
  • 食事や宿の物価は日本と同じくらいだったが飲み物がやたら高かった.500mLの清涼飲料水が2,3百円くらいする.
  • 海外ローミングの契約をケチって会議期間いっぱいまでしか契約していなかった.帰りにデータ通信がなくなりカメラ翻訳が使えなくなって不便だった.
    • 帰りは現地で会った日本組の皆さんと合流できたので事なきを得た.
  • ハングルを覚えておきかったが結局頭に入ったのは a, ya, m, ch, j の音だけ.私が賢い者でないことがわかる5.

楽しく色々と経験を積めたので総じて良い出張6だった.ここからしばらく博論のためにカンヅメであろうから最後の遠出である.


  1. ざっくりいうと機械学習を使った材料研究 ↩︎

  2. とりとめがないので文章にまとめることを諦めて箇条書きにしていきます ↩︎

  3. 実は高校の頃にSSHの交流イベントでイギリスに行ったことがあるが高校生同士だけだったし団体についていくだけだったのでノーカン ↩︎

  4. 北海道へ旅行・熊本へ応物学会・今回の韓国 ↩︎

  5. 世宗大王「賢い者は朝の間に、愚かな者だとしても十日なら十分に学んで習うことができる」 ↩︎

  6. 出張というと会社員気取りっぽいが,研究奨励費で生計を立てているし同じ予算の研究費から費用が出ているので出張と呼んでよかろう ↩︎

2022年9月15日木曜日

学会2022秋 反省会

日本物理学会2022年秋季大会が終わりました.

久々(登壇者としては初) の対面学会で,色々と感想や反省点があったので書き残しておこうと思います.

準備編

とにかく全然準備が間に合っていなかった.
発表資料は直前の3日でほぼゼロから錬成されており,当日昼までかかっていた.

今回の自分の発表は,以前発表した手法Aに既存手法Bを組み合わせると性能が上がりそう,という話だった.
しかし,これまでPythonで書いていたシミュレーションのプログラムの読み書きしづらさと遅さに耐えきれなくなってC#で書き直すなどの暴挙を始めてしまった結果,1週間前にようやくコードが書き終わったところで,データが何も揃っていなかった.

ここから連日27時くらいまで計算実験をする生活を続け,なんとか実際にちゃんと性能が上がったと言えそうなデータが得られた.
予想以外の結果が出ていたらひどいタイトル詐欺になっていたところだったし,プロセス的にもよろしくないがともかく間に合ってよかった.

なんもかんもギリギリになるまで時間をかけたスケジューリングの悪さが原因であり,今後はもっと計画的な研究生活を送りたいと思う.

発表編

発表1時間前くらいまで研究室でスライドを作っていた.
ここで急に心配性を発揮しPC・タブレット・スマホ・Googleドライブ・OneDrive・USBメモリー・印刷した紙とアホほどバックアップを用意したが,USBメモリーをプリンターに差したまま忘れ,会場ではネット環境が悪すぎてクラウドは使えず,途中で誤植や順番を修正したため紙も使えずと結局ほとんど役に立たなかった.
特にUSBを忘れたのはPC間でデータを移すこともできないので最悪だった.

ただ,スマホにもバックアップを取っていたのだけは役に立った.
というのも,PCをプロジェクターに接続するところで手間取りパワポの発表者ツールを表示できないまま始めてしまったため,カンペが見られなくなってしまい,急いでスマホを取り出してスクリプトを表示させることで事なきを得た.
後で聞くところによれば,なんか焦ってスマホいじってるなーとの印象はあったそうだが,ロクに練習もできていなかったためこれがなければトチり散らかして悲惨なことになっていたであろうので,九死に一生を得たと言える.

ここでの教訓はもしもの備えは十中八九が無駄になってもやっておくに越したことはないということだろう(本当か?)
そもそも発表者ツールを表示しそこねたのは,ギリギリまで練習していたためやたらと混んでいる会場で登壇者席まで行くのに手間取り焦っていたせいであり,準備不足が露呈した形である.

聴講編

自分の発表は初日だったためあとの日程は落ち着いて聞くことができた.

概ねよい経験ができたが少し不満点を上げておくと,案内が少なめで道に迷ってしまったことと,オンラインだとだいぶ音が聞きづらいこと.
発表が終わったあと初めて気づいたが,黒板に「ここにマイクがあるので発言者はここに向かって喋ってください」という案内があった.
気づかなかったのは自分のせいと思いきやあんまり守っている人が多くなかったのでもっとアナウンスを入れてよかったのではないかと思う.

ギャラリー

入場口(撮影は14日)

企業展示会の物理学会ブースでもらったメモ帳&クリアファイル

14日の帰りに研究室メンバーで食べてきたハンバーグ

2022年2月19日土曜日

#いいねの数に関係なく今年の講義の感想言う

早いものでもうD1の講義期間も終わってしまいました.

気づいたら前にブログを書いてからまためちゃくちゃ日が空いてしまったので,ちょいちょいTwitterでやってる講義感想をブログに書くことにします.

研究室を移ったおかげでかなり元気が回復したので,この1年で修士2年間で取った単位(研究指導関係を除く)の2倍くらい履修しました.
ちょいちょい未受験ですが,1年目にして博士卒業に必要な講義数の8倍くらい取れる計算です(なお必要な講義数は2単位なので分母が小さいだけな模様).

Sセメスター

  • 月2 知能社会情報学講義Ⅳ(統計的機械学習)
    線形回帰からk-meansまで基本的な機械学習モデルを一通り学ぶ.
    だいたい知ってる話だったのでこれはDSSのスタンプラリーのために取ったという感じ[※1].
  • 火3 戦略ソフトウェア特論
    各所からIT系の人を呼んできて公演をしてもらうオムニバス講義.
    初回が平木先生だったので技術的な話を期待していたが,思ったよりも知財とかキャリアパス的な話が多かった.将来的に必要な話なんだろうけどちょっと今はあんまり興味ないかな……
    でもDSSで必要なので単位は取った.
  • 火4 先端人工知能論Ⅰ
    ニューラルネットの色々なモデルをGoogle Colabを使って実習しながら学ぶ.
    宿題でサンプルのチューニングを頑張って分類精度を上げるゲームが始まったのでなかなか楽しかった.
    やはり手を動かしながらだと身につきやすい.
    DSS対象.
  • 木4 量子物理学
    量子力学における群論.
    群論,どこにでも出てくるな.
  • 金2 線形数理要論
    代数.
    加群とかユークリッド整域とか,今までにやった群論・線形代数の正当進化という感じ.
    DSS対象.
  • 金5 知能社会情報学講義Ⅱ(統計データ解析Ⅰ)
    R言語と確率統計を学ぶ.
    確率分布だから……という名目であんまり統計と関係ないMCMCで水素原子波動関数のプロットするやつR版をレポートで出した.
    DSS対象.
  • 通年  広域科学特別研究Ⅰ, 広域科学特別演習Ⅰ
    これらは研究指導を名目上単位にするために必修で登録だけするやつ

Aセメスター

  • 月2 先進基礎データ科学Ⅱ(ベイズ計測とマルコフ連鎖モンテカルロ法)
    MCMCに関する導入から応用まで弊研ボスが解説してくれる.
    研究にゴリゴリ使うので即役に立った.
  • 火2 算法設計要論
    ほぼ競プロ.
    内容は貪欲法・分割統治・DP・最大フロー問題・NP Hardと近似アルゴリズム.
    フローの意味がわかっただけでも受けた甲斐があった.
    DSS対象.
  • 火3 空間統計学
    データの統計分析に関して,1次元的な相関を考える時系列データに対し,空間的な相関を扱う手法についての各論.
    あんまり流行ってない印象(Pythonでの日本語文献とかほとんど無い)だけどグラフ上での相関なんかも扱えるのでかなり大事だと思う.
  • 水3 証券投資:理論と実践
    時系列解析と経済を合体させて証券投資の理論を考える話.
    面白そうだったけど次の演習の準備でだいたい潰れてあんまり出られなかった.
  • 水4—5 データサイエンス実践演習Ⅱ[※2]
    企業からデータを貰ってグループワークでデータ解析や予測をする.
    なんかうちの班は異常に積極的だったのでレポートが必要量の3倍以上になった.
    守秘義務がなかったらめちゃくちゃ内容を話したい.
  • 金2 プログラミング代数特論
    関数プログラムっていうからHaskellとか触るんかなと思って見に行ったらゴリゴリに数学やってた.途中から圏論とかやってたらしい.
    1回出れなかった回からもう何もわかんなくなってドロップアウトした.
    講義の録画が欲しかったな……
  • 集中 相関基礎科学特殊講義Ⅸ(トポロジカル物質科学概論)
    トポロジカル絶縁体・超伝導体等々に関する概論.
    修論でトポロジカル超伝導やってたはずなのになんも理解してなかったのでリベンジ.
    うーん,もう1周必要かな……

計算が間違ってなければ今期まででデータサイエンティスト養成講座の基礎課程と応用課程が修了できるはずです.
これでいつでもデータサイエンティストになれるぞ!やったね!

情報理工学系や経済学研究科など他所の講義をたくさん取れたのはこれぞ総合文化研究科って感じでとても楽しいですね.

やたらと講義を取りすぎたせいで本業の研究があんまり進んでない気がするので来期からはもうちょっと気をつけます.
週10時間+予復習なんてやってたらそりゃ時間なくなるわな……

おまけ

ついでに今後のためこれまでの分のツイートを参照できるようにしておきます.

ハッシュタグがバラバラ……


※1:指定の講義を特定の条件を満たして取得すると 東京大学データサイエンティスト養成講座 というプログラムの基礎課程を認定してもらえる.だいたい情報理工学研究科の講義. ↩︎

※2:これを履修すると応用課程の認定がもらえる. ↩︎

2021年10月4日月曜日

博士課程の1/6が終わっちゃったよ

分母が6で済むといいんですけどね,という話.

さて,Twitterでは毎日つぶやいてますが,このブログの更新は半年ぶりです.
隔週くらいで更新するって話だったはずなんですが,大変ご無沙汰してしまいました.

前回の記事 以来,すなわち博士に進学して以来全くブログを書いていなかったので,この半年間の感想を記事にしようと思います.

今の研究室生活は大変楽しんでいます.

修士の物性・実験系のM研究室から,博士で統計物理・理論系のH研究室に移ってきたわけですが,最近になってやっと「研究をやってる」という気分になってきました.
修士時代は,

  • 最終目標である高温超伝導の発現機構の解明と自分が今やっている薄膜の物性測定が遠すぎて全然実感がない
  • 超伝導理論そのものが複雑過ぎて何がわかればどうなるのか全景が全然わからない
  • 実験スケジュールがラボメンバー・余所との共同研究・実験装置の機嫌等々アンコントローラルブルなファクターが多すぎて研究計画がまるで立たない
  • 実験がパラメータを変えてるだけのルーチンワークでつまらん

など「自分で研究をやっている感」が皆無な状況でした.
よくこんなんで修士修了したものだな.
逆に,手だけ動かしてれば勝手に業績が増えていく系のラボだったおかげで学振やなんかの申請書の業績欄を埋めるのには不自由してないですが1.

現在は,自分で小課題を設定して,必要な手法を調べて実装するという流れが一応できており,やりたいことがわかっているので自分で研究奨励金の申請書も一通り自分で書けるようになりました.
半年前の学振の申請書の全然ダメっぷりを思うと成長を感じます.
なんでうち(物性)の研究室に来たのかわからんと言ったあの先生やプログラム書いてるときが一番目が輝いてると言ったあの先輩の言葉は正しかったようです.

不安なのは,分野を移ったおかげで修士の2年分で蓄積されていて然るべき専門知識がロクに無いので完全にペーペーなことです2.
研究室が合わないと気づいていたM1の時点で研究室を移るなり修士に再入学するなりしておけばよかったのに,やる気が無いまま2年過ごしてしまったことが悔やまれます.
DC1は出してすらおらず,DC2は理解も浅いまま書いたので当然のように落ちており,この上年限超過していったら金銭的にだいぶしんどいですね.
なんとか研究がうまく進むことと次の申請が通ることを祈って,今後精進していきたいと思います.


  1. 著者順としては2nd以降なので数だけあっても業績の評価としてどれだけあるかというと微妙な気はします ↩︎

  2. 物性物理学の知識も正直全然わからないまま実験だけやってたようなものなので物性の専門知識ならあるかというとそんなに無い説がありますが…… ↩︎

2021年3月13日土曜日

博士に進学します

こんにちは、雪下です。

先日、博士の入学許可書が届きました。これで、入学手続きをすっぽかしたり修士が取れなかったりしない限りは、来年度から博士課程に進学することが決まりました。(などと書き出したはいいものの、いつの間にか半月ほど経ち、博士の入学手続きも修士課程修了者の発表も終わり年度内のイベントも残すところ修士の学位記授与式くらいとなってしまいました。そういうところだぞ。)

同じ専攻・系内の進学ですが修士とは別の研究室にお世話になることになります。わりと珍しいパスだと思うのでこの機に一度これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

研究室を行ったり来たり

これまでにも私はコロッコロと研究室を移っています。ここまでの遍歴をまとめてみましょう。

B4 春学期学生実験:M研究室(低温物性・超伝導)
→B4 卒業研究:H研究室(統計物理・機械学習)
→修士:改めてM研究室に進学
→博士:H研究室に進学

落ち着きがないですね。
弊研究科はめちゃくちゃ広範囲の分野の研究室が集まっているので同じ系でもやっていることが全然違います。
それぞれで何があったのかを書いていきます。

学生実験

私が学部時代所属していた T学科は4年春学期にまずそれぞれの研究室で半年学生実験を行います。
私は高校の頃から超伝導現象に興味を持っていた&実験が好き(だと思っていた)ので超伝導実験を行うM研を志望しました。

液体ヘリウムを使い超伝導体の特性を計測する実験を行っていたのですが、何度繰り返してもまともなデータが取れません。どう見ても測定系が異常なのですがどれを取り替えても改善せず結局まともな結果が得られないまま半年が終わりました1。
散々な結果でしたが学生実験を行った実験室とM研のメインの実験室では設備も違う2ということでうまく行かなかったのはたまたまやる実験が良くなかったのだと信じることにし、この時期にあった修士出願はM研に出しました。
私はまだ超伝導の実験がしたかったというのと、この時期は卒業単位数を大きく越えてバカスカ講義を取っていたので忙しくあまり深く考えず唯一知っている研究室に出しちゃったというところもあります。

卒業研究

弊学科では卒業研究は4年秋学期の半年のみです。修士はバリバリ実験系のM研に出したものの、卒業研究の志望は打って変わって理論系のH研究室に出しました。
これからずっと実験をやっていくことになるのだしせっかく流動性の高いシステムなのだから理論系の研究室を経験しておきたいなと思ったのです。

卒研ではH先生と議論し、機械学習を物性予測に役立てようという研究をしました。先行研究に毛を生やした程度でしたがもともとプログラミングやら機械計算やらが好きだったのがハマり、楽しかったです。

修士課程

修士は改めてM研に所属し、超伝導体の研究を行いました。
超伝導体の研究をしたかったのは確かでした。実際、自分のやりたい実験をやっているときは時間を忘れて徹夜で実験を続けたりしても苦ではなかったです。
しかし、結局不満のほうが大きく正直言ってミスマッチだったと言わざるを得ません。

まず、研究室の人員に対し実験装置(特に低温測定用の装置)が限られており、スケジュールがかなり状況に左右されること。
もちろん仕方ないことですが、過集中のケがある私にはノッていないときに実験をし、ノッているときに実験できないのはだいぶ調子が狂う原因となりました。

また、装置の質が悪いのかなにかが間違っているのか、作製条件がブレブレで全然再現がとれなかったこと。学生実験がうまく行かなかったのは必然だったのかもしれません。
共同研究先に一度できたこの条件の試料を提供しますという約束をした後、いざ本番試料を作ってみようとすると全く再現せず、しかし一度はできたものだから諦めることも許されないという状況が立て続き、1ヶ月ほど同じことをやり続けたことがあります。
このときはマジで心が折れて半分不登校みたいな状態になってました。

さらに、研究室のメンバーとの相性も悪かったこと。
皆さんブラック企業戦士みたいな人ばっかりで朝から晩までずっと研究室にいる(コロナが始まった後も事務に怒られるくらい出席率が高かった。ダメだろ。)ので、人のいるところだと落ち着かないしデータ解析のときくらいは自宅に居たい私は肩身が狭かったです。
こういうストイックさというか厳しさというかは外部の人にも有名だったようで、学会に行って企業の人と話していたらあ~あの研究室ね、大変でしょ。みたいな会話をして初めて知りました。なんで内部生が知らないんじゃ。
こういうリサーチが足りていなかったのは完全に適当に選んだ私の責任ですが、卒研の前に修士の研究室を決めないといけないというシステムの側に多少ならぬ恨みを抱いています。

色々と不満がありつつも1年目は積極的にコミュニケーションを取って気を使ってくださったある先輩のおかげで、2年目はコンコルド効果によって、修論提出ギリギリまで実験データがロクにないなどをなんとか乗り越え修了までこぎつけました。

博士への進学

修士後の進路について。時は戻ってM1秋頃はまだ就職する意思がないでもなかったのですが、純粋に忙しかったのと心も死んでた3ので気づいたらM2秋になっていました。
流石にもう就職は無理なのと、卒業研究のときの計算系の研究がどうしても恋しかったので(修士が無にならないよう)物性物理と機械学習を組み合わせた研究ができるような研究室を探していました。
実は修士時代にもこういう研究に手を付けてはいたのですが、「本業は実験」という方針のもと、結局深く関われず中途半端に終わってしまっていたのです。

が、既にこれからコンタクトを取るというには遅い時期だったので気後れして逆にズルズルと先送りするという最悪行動を続けていたところ、ついになんの進路も決まっていないのに何もしていないことをM先生に叱られ、寮の隣室のT君にも見ててやるからさっさとアポを取れと心配され始めたので、面識がありまだハードルが低く思われたH先生に連絡を取りました4。
H先生は丁寧に関連する研究室などの情報を教えてくださり、最終的にH研究室に受け入れてくださることが決まりました。こんなヤバげな学生を引き受けてくださるH先生には頭が上がりません。

入試やら手続きやらでも色々とやらかしがありましたが、なんとか入学許可を頂き、これで春から博士課程に進学することとなりました。
機械学習の研究に手を出したりしたときに「プログラミングしてるときは目の輝きが違う」「なんでうちの研究室に来たのかわからない」「計算機に向かっているほうが合っていると思う」などと言われていたので今度こそうまくやっていけるといいなと思います。
修士時代は色んな人に迷惑を掛け倒しだったので今度こそはまっとうに生きられるよう努力します。


  1. ちなみにこの実験はこの間リベンジしました。当時と同様の測定系ではやはり全然うまく行かないので感度の良い電圧計でひたすら一点一点測定するというゴリ押しでなんとか期待する特性を測定することができました。 ↩︎

  2. 例えば極低温まで冷却して物性を測るにあたっては学生実験では経験のため2重デュワー瓶に窒素とヘリウムを直接入れてポンプで減圧するまで手動で行っていましたが、ラボでは自動で温度が設定でき定速度スキャンも楽々なPPMSという装置を使用しています。 ↩︎

  3. どれくらい死んでたかと言うと学部後半2年間で卒業単位+60くらい取ってた人間が修士では修論など含め32/32ちょうどしか取らなかったくらいです。 ↩︎

  4. これがなかったらいよいよ詰んでいました。ありがとう、M先生とT君。この歳になって叱ってくれる人がいるというのはありがたいことです。 ↩︎