2021年3月13日土曜日

博士に進学します

こんにちは、雪下です。

先日、博士の入学許可書が届きました。これで、入学手続きをすっぽかしたり修士が取れなかったりしない限りは、来年度から博士課程に進学することが決まりました。(などと書き出したはいいものの、いつの間にか半月ほど経ち、博士の入学手続きも修士課程修了者の発表も終わり年度内のイベントも残すところ修士の学位記授与式くらいとなってしまいました。そういうところだぞ。)

同じ専攻・系内の進学ですが修士とは別の研究室にお世話になることになります。わりと珍しいパスだと思うのでこの機に一度これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

研究室を行ったり来たり

これまでにも私はコロッコロと研究室を移っています。ここまでの遍歴をまとめてみましょう。

B4 春学期学生実験:M研究室(低温物性・超伝導)
→B4 卒業研究:H研究室(統計物理・機械学習)
→修士:改めてM研究室に進学
→博士:H研究室に進学

落ち着きがないですね。
弊研究科はめちゃくちゃ広範囲の分野の研究室が集まっているので同じ系でもやっていることが全然違います。
それぞれで何があったのかを書いていきます。

学生実験

私が学部時代所属していた T学科は4年春学期にまずそれぞれの研究室で半年学生実験を行います。
私は高校の頃から超伝導現象に興味を持っていた&実験が好き(だと思っていた)ので超伝導実験を行うM研を志望しました。

液体ヘリウムを使い超伝導体の特性を計測する実験を行っていたのですが、何度繰り返してもまともなデータが取れません。どう見ても測定系が異常なのですがどれを取り替えても改善せず結局まともな結果が得られないまま半年が終わりました1
散々な結果でしたが学生実験を行った実験室とM研のメインの実験室では設備も違う2ということでうまく行かなかったのはたまたまやる実験が良くなかったのだと信じることにし、この時期にあった修士出願はM研に出しました。
私はまだ超伝導の実験がしたかったというのと、この時期は卒業単位数を大きく越えてバカスカ講義を取っていたので忙しくあまり深く考えず唯一知っている研究室に出しちゃったというところもあります。

卒業研究

弊学科では卒業研究は4年秋学期の半年のみです。修士はバリバリ実験系のM研に出したものの、卒業研究の志望は打って変わって理論系のH研究室に出しました。
これからずっと実験をやっていくことになるのだしせっかく流動性の高いシステムなのだから理論系の研究室を経験しておきたいなと思ったのです。

卒研ではH先生と議論し、機械学習を物性予測に役立てようという研究をしました。先行研究に毛を生やした程度でしたがもともとプログラミングやら機械計算やらが好きだったのがハマり、楽しかったです。

修士課程

修士は改めてM研に所属し、超伝導体の研究を行いました。
超伝導体の研究をしたかったのは確かでした。実際、自分のやりたい実験をやっているときは時間を忘れて徹夜で実験を続けたりしても苦ではなかったです。
しかし、結局不満のほうが大きく正直言ってミスマッチだったと言わざるを得ません。

まず、研究室の人員に対し実験装置(特に低温測定用の装置)が限られており、スケジュールがかなり状況に左右されること。
もちろん仕方ないことですが、過集中のケがある私にはノッていないときに実験をし、ノッているときに実験できないのはだいぶ調子が狂う原因となりました。

また、装置の質が悪いのかなにかが間違っているのか、作製条件がブレブレで全然再現がとれなかったこと。学生実験がうまく行かなかったのは必然だったのかもしれません。
共同研究先に一度できたこの条件の試料を提供しますという約束をした後、いざ本番試料を作ってみようとすると全く再現せず、しかし一度はできたものだから諦めることも許されないという状況が立て続き、1ヶ月ほど同じことをやり続けたことがあります。
このときはマジで心が折れて半分不登校みたいな状態になってました。

さらに、研究室のメンバーとの相性も悪かったこと。
皆さんブラック企業戦士みたいな人ばっかりで朝から晩までずっと研究室にいる(コロナが始まった後も事務に怒られるくらい出席率が高かった。ダメだろ。)ので、人のいるところだと落ち着かないしデータ解析のときくらいは自宅に居たい私は肩身が狭かったです。
こういうストイックさというか厳しさというかは外部の人にも有名だったようで、学会に行って企業の人と話していたらあ~あの研究室ね、大変でしょ。みたいな会話をして初めて知りました。なんで内部生が知らないんじゃ。
こういうリサーチが足りていなかったのは完全に適当に選んだ私の責任ですが、卒研の前に修士の研究室を決めないといけないというシステムの側に多少ならぬ恨みを抱いています。

色々と不満がありつつも1年目は積極的にコミュニケーションを取って気を使ってくださったある先輩のおかげで、2年目はコンコルド効果によって、修論提出ギリギリまで実験データがロクにないなどをなんとか乗り越え修了までこぎつけました。

博士への進学

修士後の進路について。時は戻ってM1秋頃はまだ就職する意思がないでもなかったのですが、純粋に忙しかったのと心も死んでた3ので気づいたらM2秋になっていました。
流石にもう就職は無理なのと、卒業研究のときの計算系の研究がどうしても恋しかったので(修士が無にならないよう)物性物理と機械学習を組み合わせた研究ができるような研究室を探していました。
実は修士時代にもこういう研究に手を付けてはいたのですが、「本業は実験」という方針のもと、結局深く関われず中途半端に終わってしまっていたのです。

が、既にこれからコンタクトを取るというには遅い時期だったので気後れして逆にズルズルと先送りするという最悪行動を続けていたところ、ついになんの進路も決まっていないのに何もしていないことをM先生に叱られ、寮の隣室のT君にも見ててやるからさっさとアポを取れと心配され始めたので、面識がありまだハードルが低く思われたH先生に連絡を取りました4
H先生は丁寧に関連する研究室などの情報を教えてくださり、最終的にH研究室に受け入れてくださることが決まりました。こんなヤバげな学生を引き受けてくださるH先生には頭が上がりません。

入試やら手続きやらでも色々とやらかしがありましたが、なんとか入学許可を頂き、これで春から博士課程に進学することとなりました。
機械学習の研究に手を出したりしたときに「プログラミングしてるときは目の輝きが違う」「なんでうちの研究室に来たのかわからない」「計算機に向かっているほうが合っていると思う」などと言われていたので今度こそうまくやっていけるといいなと思います。
修士時代は色んな人に迷惑を掛け倒しだったので今度こそはまっとうに生きられるよう努力します。


  1. ちなみにこの実験はこの間リベンジしました。当時と同様の測定系ではやはり全然うまく行かないので感度の良い電圧計でひたすら一点一点測定するというゴリ押しでなんとか期待する特性を測定することができました。 ↩︎

  2. 例えば極低温まで冷却して物性を測るにあたっては学生実験では経験のため2重デュワー瓶に窒素とヘリウムを直接入れてポンプで減圧するまで手動で行っていましたが、ラボでは自動で温度が設定でき定速度スキャンも楽々なPPMSという装置を使用しています。 ↩︎

  3. どれくらい死んでたかと言うと学部後半2年間で卒業単位+60くらい取ってた人間が修士では修論など含め32/32ちょうどしか取らなかったくらいです。 ↩︎

  4. これがなかったらいよいよ詰んでいました。ありがとう、M先生とT君。この歳になって叱ってくれる人がいるというのはありがたいことです。 ↩︎

2021年2月17日水曜日

えっもう半月経ったの???日記

「だいたい隔週」刊日記、早いもので 前回 からもう半月経ってしまいました。

前回はやっと修論発表が終わったということで開放感に満ちていた気がしていましたが、その後も消えないタスクが積み重なり未だちゃんと開放感を味わえていません。

先週は広域科学専攻の博士進学希望者がみんな集まって発表会をやろうという企画に参加させられていました。
広域科学専攻全体なので修論発表よりも更に広い分野の人が集まっており、全然知らない分野の発表を聞けて面白かったのは良いのですが、それだけ「初心者」に向けて丁寧な発表が求められる一方で発表時間はたったの8分とそれは無理だろみたいなスケジュールで行われました。無理でした(2分オーバーした)。
そういえばこれの報告書を書かなければいけないんでした。忘れるところだった。

今は(博士では別の研究室に移るので)実験の引き継ぎのためデータをまとめているところですがめちゃくちゃ時間がかかっています。
というのも実験のデータ形式を途中でちょくちょく変更している上に、研究を始めたころは実験ノートが適当ですごく分かりづらくどれがどのデータやねんという状態になっています。電子データなのでデータ作成日時などを読んで頑張って再構築していますが、当時の自分を殴りたいです。

  

話は変わりますが、この2週間で2回PCR検査を受けてきました。
修論書いてる頃からずっと微妙に咳が出ていて、微妙な発熱もあったため修論が終わってやっと病院に行ったところ「もう症状で区別とかできないんで検査しちゃいましょう」と言われて検査を行いました。1週間経ち薬を飲みきっても症状が収まらないのでまた検査を受けました。検査をやってから結果が出るまでは自粛してないといけないので、おかげでかなり大学をサボることになりました。

2度とも無事陰性でしたが万一コロナに感染していたらどうなっていたんでしょうね。
具合が悪かろうがやることやらないと修了できないため、大学にはいつもと変わらないくらい出ていた(私は寝起きがめちゃくちゃ悪いので朝検温しても引っかからないんですよね)ので確実にラボがクラスター化していたと思います。

実は修論発表前にも保健センターに行ったんですがこのときは「検査を受けると徒歩で帰ってもらうことになる」と言われて無かったことにしました。流石に電車で45分の距離を徒歩はちょっと……

こういう色々を考えると大学のコロナ対策もガバガバですね。いや私がすり抜けるようなマネをしてるのが悪いんですが。何事もなくてよかった。

 

次回はそろそろ修士修了&博士進学の可否が正式に決まる頃なのでそのネタでなにか書くと思います。

2021年2月1日月曜日

あけましておめでとうございます

序文

お久しぶりです。ブログの更新は(途中に現実逃避でやった技術試験を除いて)2ヶ月以上ぶりとなります。間隔的に12月中には何かしら書くつもりだったのですが、気づけばクリスマスどころか1月も終わってしまいました。

先程、ようやく修論発表が終わりました。マルチタスクが苦手なので修論という大きなタスクを抱えたままだったこの2ヶ月間は実質虚無です。つまり今が年明け。年賀状の返礼を書いています。年賀状を頂いた方々は今しばらくお待ち下さい。

虚無だったこの2ヶ月間にあったことをつらつらと記録していこうと思います。

Contents

修論がしんどい

修論がめちゃくちゃしんどかったです。というのも実験がめちゃくちゃ押していて修論提出1週間前までずっとデータを取っていました。
こんなに遅くなったのは実験室にあったアンプがことごとく死んでいてアホほど時間を浪費したり、実験に必要な材料がコロナのせいで12月中旬ごろまで全然届かなかったりと、必要なデータがほとんど取れていなかったためです。なんなら最終的にタイトルと違う結果になってしまいました。12月30日とかにひとり研究室で実験してたときなんかは生きた心地がしなかったです。

そんなこんなでも結果的に修論提出、修論発表と終えることができました。まあ修論をリジェクトされることは流石に無いでしょう。これで晴れて自由の身です。(これは罠でまだいろいろデータが足りていないので追加実験をしなければいけない。)

博士進学手続き中

喉元をすぎれば熱さを忘れるということで、こんなに苦しんだにもかかわらず博士進学の手続きをしています。今の研究室はなんやかんやあって1自分には合わないということがこの2年でわかったので別の研究室に移ります。

まあ博士進学で落とされるということも聞いたことないし無いでしょう、と言いたいところなのですがかなり深刻なポカをやらかしたので若干怪しいです。内容を具体的に書くと関係者は一発で私だとわかるであろうレベルでそんなことある?みたいなことをやったので具体的な言及は控えます。知りたければクローズドな場で私に聞いてください。
D進浪人、なんてことになったらどうなるんですかね…… とりあえず親に合わす顔がありません。

知らん間に論文が出た

この2ヶ月で虚無になっている間に論文が2本出版されました。全部共著ですが以前出た1本と気づいていなかったもう1本をあわせて業績が論文4報となりました。h-indexが2になったらしいです。
うちの研究室は測定系の研究をしている共同研究先に試料を作って提供するという形の共同研究を結構やっているので自分で書かなくても論文が増えるんですね。いや内容チェックはしているので知らん間ということはないんですが査読で結構待たされてる2ので忘れてました。
一瞬得した気分になりますが試料作るのめちゃくちゃしんどかったのでそんなことなかったです。

修論はちょっと論文になるような内容にならなかったのでアレですが早く1st authorで論文が出せるようになりたいですね。

駅前にセブンができた

最寄り駅前は1点から見渡せる範囲に3軒ローソンがある3という謎立地なのですが、先月この中にセブンが割り込んできました。隣にスーパーもあるのによくやろうと思ったな。
商品のバリエーションが増えて嬉しいですね。冷凍食品シリーズがそのへんのスーパーよりも豊富で、容器ごとレンジでチンするだけで食べれるスパゲッティやらグラタンやらを買い込むことで引きこもりに磨きがかかりました。

おわり

2ヶ月間後回しにしていたタスクが降り掛かってきたり、いよいよ寮からも追い出されるので引っ越しの準備をしなければいけなかったり、まだ研究が終わったわけでは全然なかったりといろいろありますがひとまず大きい山をなんとか越えられてよかったです。
今度はちゃんと半月後には次回の記事が書けているといいですね。


  1. 現研究室が合わない理由、という話だけで1記事書けそうなくらいに理由があるのですがこのHNは実質本名レベルに個人情報がガバガバなので研究室の悪口を垂れ流すような真似は控えます。 ↩︎

  2. 1本は提出してから13ヶ月かかってました。何をやっていたのやら。 ↩︎

  3. 駅ナカのキオスクもローソンなのでこれを入れれば駅周辺に4軒あることに。 ↩︎

2021年1月18日月曜日

𝑹𝒆𝒊 𝒏𝒐 𝑭𝒐𝒏𝒕 (数学用英数字記号)に変換する器

例の文字,一文字ずつ変換するのは面倒なのでJSで書いてみました.多分どっかにもっといい感じの変換器があると思います.(検索ワードがわからん……)

inputにA-Za-zのASCII文字を入れて変換実行を押すとresultに変換した文字が出力されます.
A-Za-zと半角スペース以外の入力は無視されます.

プルダウンメニューでBold以外にも変えられます.



input:
変換:


result:



なおアクセシビリティが低下するので一般の書類への使用は避けましょう.

コード領域ごとやっつけで変換しているので,文字と変換先によっては対応するUnicodeがRESERVEDになっていたり環境が対応していなかったりで豆腐になることがあります.

なにか不具合等ありましたらコメントかTwitterまで.

2020年11月23日月曜日

研究に関係する元素レビュー

東大CASTの 元素ガチャ 、楽しいですね。駒場祭開催中に機能が追加されてってるのすごい。

後輩がFleetで「研究に関係する元素紹介コーナー」をやってて面白そうだったので私もやってみまようと思います。

  • He
    とても大事な寒剤。ジャボ漬けするだけで4Kまで行けるうえ減圧するともっと冷える。他の寒剤は割とすぐに凍ってしまうのでこうは行かない。
    いつも枯渇しそうになっているので心配。大事なので駒場では回収してリサイクルされています。
  • N
    とても大事な寒剤その2。液化Heはただのデュワー瓶(魔法瓶)だけだとすぐ熱が伝わって蒸発してしまうので、さらに液化N2の中につける二重デュワー瓶にしている。ディフュージョンポンプの冷却材としても使ったりする。
    超伝導のデモ実験にも大活躍ですね。弊研究室ではYBCOは学生実験と対外デモでしか使いませんが。
    また不活化ガスとしてHeやN2が真空系のパージに使われたりもする。
  • C, H, O
    洗浄のためにエタノールやアセトンをよく使います。
  • F
    試料を作るのにすごく強いパルスレーザーが必要なのだが、その発振にFとKrの混合気体が使われている。気体交換でF2ボンベを使うときはかなり緊張する。
  • Ar
    酸化しやすかったり空気中の水分と反応しやすかったりする物質はArやN2で満たされたグローブボックスの中で扱います。
  • Fe
    私の研究のメイン、FeSeの主成分。超伝導は磁場により壊れるなど磁性とは相性が悪いと考えられていましたがFe系超伝導体というモロに磁性元素を含む超伝導体グループが発見されて大ニュースとなったとか。発見から12年経ちましたが今も高温超伝導の原理解明のため研究が続けられています。
  • S, Se, Te
    FeSeのもう一つの主成分。ヒ素を含んでいる他の鉄系超伝導体と比べると安全、ということになっていますが普通に体に悪い。
    周期表の上下ということでSeをSやTeに置換して構造に圧力を加えるなどの効果を導入した物を含めてFeCh(鉄カルコゲナイド)と括られています。
  • Cu
    銅線の導線って同じものを指してていながら違うことを意図していてややこしいですよね。
    鉄系と対をなす高温超伝導体のグループ「銅酸化物系」の中心元素。こっちのほうが総じて転移温度は高い。
  • Ag
    電気伝導率が最高。すごく細かい配線を繋ぐときによくペースト状のものを使う。
  • Au
    錆びない。配線によく使う。50μmや25μmの細線を顕微鏡を覗きながら銀ペーストでつないでいる。
  • Pt
    研究で電気化学反応も扱うのだが、その際の電極としてPt箔を用いる。値段の事は考えない。
  • In
    柔らかく、融点が低い。ハンダの成分として使われるが、ハンダだと超伝導転移して測定に影響がある場合があるためIn単体を融かして使うこともある。
  • Sn
    3.72Kで超伝導を示す。表面の酸化皮膜がジョセフソン接合(超伝導版トンネル効果。普通のトンネル効果よりも厚いスケールの障壁を超えられる他色々な応用例がある)を作るのに丁度いいためちょくちょく使う。
  • Y, Ba
    上記銅酸化物系超伝導体で一番メジャーな化合物YBCO(YBa2Cu3O7-x)の他の構成元素。混ぜて焼くだけで液化窒素温度で超伝導を示すのですごい。(混ぜて焼くだけと言うが混ぜるのが結構重労働である。)弊研究室ではデモ実験くらいでしか作らない。
  • Bi
    同じく銅酸化物系で有名なBSCCO(Bi2Sr2Ca2Cu3O10)はBi系とも呼ばれる。標準試料としてそこそこ測定に使われている。
  • Sr, Ti, Ca, La, Al
    薄膜試料を作るための基板としてSrTiO3, CaF2, LaAlO3などの結晶が使われる。

同じ元素でも人によって見方が違ったりするの、面白いですよね。

みなさんもガチャを回してお気に入りの元素を引いたり引けなかったりしましょう。

2020年11月17日火曜日

三角のプロットマーカーは何形か

Introduction

突然ですが、皆さんはグラフのプロットにはどのマーカーを使っていますか?

だいたいはデフォルトの○や□あたりで事足りると思いますが系列が増えてくると他の形のマーカーを使うことがあるかもしれません。

多くのグラフ描画ツールではオプションとして選べるマーカーの中に△も用意されています。


ところで三角形と言っても色々ありますよね。ぱっと見たところ正三角形っぽいですが果たしてそうなのでしょうか。

また、○や□ならその中心がデータ点だとわかりますが、三角形の中心はどこなのでしょうか。正三角形でないなら重心か垂心か外心か、はたまたそのどれでもない何か[1]なのか、色々と選択肢が出てきます。

本記事では各種グラフ描画ツールで△のマーカーが果たしてどんな形なのかを調べてみました。

グラフ描画ツールによる△マーカーの違い

Excelの場合

以下の図は正方形(青・枠のみ)のマーカーに三角形(オレンジ)のマーカーを重ねて描画したところです。


ご覧の通り、正方形に内接し、底辺の長さと高さが等しい二等辺三角形で、高さの2等分点が中心に位置していることがわかります。

Googleスプレッドシートの場合

一方、Googleスプレッドシートで同じように描画すると、異なった結果が得られます。



正方形とはぴったり重ならず、円にちょうど内接しています。

こちらの△のマーカーは正三角形で、中心は重心になっていることがわかりました。

その他

他のツールも調べてみましょう。

Excelパターン

  • Python matplotlib


Googleスプレッドシートパターン

  • MATLAB

    同じサイズを指定してプロットしています。
    大きさの関係はGoogleスプレッドシートと異なるものの、重心を中心とした正三角形であることがわかります。

  • Geogebra


  • Origin


また、LabVIEWでは三角形のマーカーはありませんでした。

まとめ

△型のプロットマーカーはおよそ2通りのパターンに分けられる事がわかりました[2]

Googleスプレッドシートパターンのほうがなんとなくそれらしい気がしますね。こっちだと下向き▽と重ねたときにいい感じに六芒星になるので私は好きです。

同じ場所に△、▽、大きさの違う3つの○をプロットしたところ

ただ、「中心」の決め方が2通りあることからわかるように、マーカーをおいたとき△だと真のプロット点がどこなのかはっきりしません[3]。実際には中心点に対し点対称な形のマーカーを使ったほうが良いでしょう。

次回は△のマーカーがどれくらい「ズレて」いるのかを検証してみたいと思います。




[1] 余談ですが、「三角形の中心」は2020/9/1現在 39474 種類も登録されている(Encyclopedia of Triangle Centers に登録されたもの。今見てきたら更に増えていた。)ほど多いです。

[2] なお、○と△のマーカーで同じサイズを指定しても大きさの関係がそれぞれ違うのもまた興味深いですね。

[3] 「高さの半分」と「重心」とでは高さの1/6だけ位置にずれが生じます。

2020年11月1日日曜日

「クローバー」の正体

クローバー - 植物の一属・シャジクソウ属の総称。一般的にはシロツメクサを指す。 ― Wikipedia「クローバー」 

 クローバーは日常の中でもそれなりに身近な植物であろう。3つ、または4つの葉を持ち、特に4つ葉のものはその希少性から幸福の象徴としてよく図案などでモチーフとされる。

"クローバー イラスト"でのGoogle検索結果

身体障害者用標識の図案も「四葉マーク」「クローバーマーク」などと呼ばれたりする。

Wikipedia「身体障害者用標識」より

先日実家からの仕送りに使われたダンボールにも"4つ葉"のマークが使われていた。

世田谷自然食品 [1] のダンボール

ところで「クローバー」の和名はシロツメクサである。緩衝材として詰め物にされていたことと小さく白い花がその名の由来である。そのへんの道草にポンポン生えている身近な植物である。

Wikipedia「シロツメクサ」より
この植物をよく見てみると上に挙げた「クローバー」のイラストとは葉の形がまるで違うとこがわかる。3つ葉か4つ葉かはさておき、イラストでは殆どがハート型の葉が書かれるが「本物」は先端が丸まった涙滴型である。
一方、イラストに描かれるハート型の葉を持つ植物も結構そのへんに生えている。先日大学の建物の脇にも繁殖していた。

大学に繁茂していたクローバー(偽)
筆者は小学校の時分は「シロツメクサ」と「クローバー」は別モノであって、クローバーはこのハート型の葉の植物を指すのだと思いこんでいた。明らかに巷のイラストとシロツメクサとは特徴が異なっていたから無理もないね。
しかしWikipediaでも明確にクローバーとはシロツメクサ(を始めとするシャクジソウ属)を指すと言っている。ならばこのクローバー(偽)は何物なのか。

結論を言えばこいつはカタバミである。あ~名前は聞いたことある、それがこれだったのか、とググって納得した。
調べようと思えば一瞬でわかることなのでご存知の方も多いかもしれない [2]。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。クローバーもカタバミもだいたい外を歩いているときに見かけるのでなかなか調べる機会がなかったんですよね。


 さて、シロツメクサは マメ目マメ科マメ亜科シャジクソウ属であるのに対しカタバミはカタバミ目カタバミ科カタバミ属とかなり別物である。なぜこれだけ混同されているのだろうか。少し考えてみたい。

1つはアイルランドなどでの「シャムロック」という語の存在である。これももともとはクローバーを指す言葉だったのが、キリスト教の三位一体の概念と結びつき3つ葉の草全般を指して信仰の象徴とされているようである。

もう1つはカタバミの「幸運の象徴たる4つ葉のクローバー」という概念における都合の良さである。カタバミも突然変異により4つ葉の個体を生ずることがあるし、ハート型の葉の形から本家クローバーよりも幸運感マシマシである。
さらにカタバミの近縁種にモンカタバミ [3]というものがあり、これは種として4つ葉であることから観賞用に4つ葉のクローバーの代替品種として販売されている。確定で出るのは強い。希少価値もなにもあったものではなくなってしまうけど。

Wikipedia「モンカタバミ」より

 ブログのネタ埋めのために[4]最近続けて見かけて気になっていた「クローバー」の正体について書いてみた。検索して出てきたクローバーのイラストが予想以上に右も左もハート型だったのでみんな間違ってんじゃんとちょっと安心したけれど、カタバミもかわいいので私は好きです。