2020年9月27日日曜日

東北旅行記

また前から間が空いてしまった。せっかくなので4連休で行ってきた旅行の日記をつけようと思う。

概要

2020年9月19日(土)~22日(火) の4連休、(元含む)寮の同期[1]4人で車を借り仙台発、山形・秋田・青森・岩手を周り仙台に戻ってくる旅行を行った。

メンバーは

  • A氏:社会人。鉄オタ。旅慣れしているので旅行の手配をだいぶ頼っている
  • B氏:M2で寮の隣人。学科柄航空オタク
  • C氏:社会人。仕事柄航空オタクになった
  • 筆者:酒が飲めないので自動的にハンドルキーパーになる

の4人である。

旅程詳細

9/19(Sat.)

・朝イチで東京駅に集合。東北新幹線で仙台へ。
東海道以外の新幹線は初だったのでちょっとテンションが上がった。

・仙台駅着後レンタカー屋で自動車をレンタル。
車種ははっきり確認し忘れたが日産のe-POWERとかだったと思う。モーター駆動のガス・エレクトリック式で結構運転感覚がいつもと違う。回生システムが動いているときのエンジンブレーキがものすごい。
ルームミラーがカメラの映像を映す方式だった[2]。やたらとハイテク。

余談だが仙台市内にめちゃくちゃ名鉄バスみたいな塗装のバスがいた。A氏に聞いてみると仙台交通は名鉄グループらしい。血が濃すぎでしょ。

・本格的に移動する前に仙台市内、愛子駅で一時停車。
駅メモのイベント駅であるためA氏からの要望であった。

・宮城と山形の県境あたり、天童市将棋資料館を訪問。様々な将棋駒を見学した。

・山形県銀山温泉を訪問。ちょっと手前の記念館(?)で車を停めシャトルバスで温泉街へ向かう。町並みを散策し蕎麦と豆腐を食べた。


銀山温泉街の町並み

・日も下がってきた頃、日本海沿岸、山居倉庫を訪問。
C氏の提案をそのまま旅程に入れたので知らなかったが彼から米倉としての工夫や船着場などいろいろ説明を受けた。
そのまま魚市場の海鮮を食べる計画であったがコロナの影響かネットの情報より早く閉まってしまっていた。近隣の料理店で寿司定食を食べた。


山居倉庫

・食後、更に北上し秋田市内のホテルに宿泊。
日も暮れてきたところで借りた車がライト機能も非常に高性能であることを発見。対向車の有無などを判断し自動でハイビームを切り替えられる。信号やリフレクターなどをちゃんと判別しているようでなかなかの高精度だった。一方カメラ式のルームミラーは雨が降り出すと全く役に立たなくなった(普通のミラーと切り替えられるのでもちろん後ろは見える)。

ここまで車で270km、新幹線を含め600kmの移動。

1日目行程
1日目行程

9/20(Sun.)

・朝から移動開始。すき家で朝食を済ます。

・内陸側に西進し、角館武家屋敷を訪問。城下町の武家屋敷がたくさん保存されている。伝統工芸「樺細工」(桜の皮の利用し模様を生み出す)の展示館も見学。小豆粉から作った落雁、「もろこし」をお土産に購入。


武家屋敷(これがたくさんある)

・田沢湖へ。湖岸をほぼ一周し、たつこ像を見学、昼食に近くの食堂でラーメンを食べた。


たつこ像対岸あたりにあった神社

・3時間ほど北上し青森県に突入。今度は十和田湖へ。駐車場から10分ほど歩いて十和田神社に参拝した。
夕焼けでなかなか綺麗な景色だったがスマホのカメラでは如何せん逆光で全然映らない。


順光方向ならなんとか映る

・下北半島付け根あたり、野辺地駅周辺で寿司を食べた。

・ホテルに一旦チェックインした後、天体観測のため恐山へ向かう。
しかし真っ暗な山道で対向車も全然いないこともあり、C氏がビビり散らかしていたのが全員に伝染(ちなみに運転していたのは筆者である。めっちゃ怖かった。)、途中で引き返しもう少し開けたところの公園に停車した。なお天候不順のため結局星は見えずさっさと引き返してきた。
この日の移動は320km。


2日目行程
2日目行程

9/21(Mon.)

・北上し本州最北端、大間崎へ。道中太平洋沿岸から対岸、つまり北海道の陸地がほのかに見える。津軽海峡って意外と近いんですなあ。最北端では”最寄り駅”がギリギリ函館市電「湯の川」停留所になる。実質北海道。
大間で昼食にマグロ丼を食べた。めちゃくちゃ美味いわ、びっくりした。マグロそのものが美味いと感じたの初めてかもしれない(バカ舌なので)。



かすかに対岸に町並みも見える

マグロがでっかいマグロ丼

・来た道を戻り三沢航空科学館を訪問。当初は予定になかったが何故か航空オタクが2人もいる集団なので訪問が決定。オタクの解説を聞きながら科学館を回るとためになりますね。
十和田湖に沈められていたのが引き上げられたゼロ戦などの展示を見学。


十和田湖から引き上げられたゼロ戦

航空科学館なのになぜか艦船の絵も展示されていた。菅野泰紀氏による写真と見紛うほどの精緻な鉛筆画で、艦内神社の慰霊ということで関係各所に奉納されているらしい。


写真ではなく鉛筆画である

・急に目的地を増やしたので次の目的地、花巻市の宮沢賢治記念館には閉館時間までに間に合わなくなった。観光地の夜は早い。
車中で調べたところもう少し近い盛岡市に「もりおか啄木・賢治青春館」を見つけたのでそこへ。旧銀行を改装した記念館で色々見学。


もりおか啄木・賢治青春館(旧九十銀行)

・この日は食事もつけたのでそのまま一関市の宿へ。牛を焼いて食べた。とても美味い。
青森北端から岩手南端まで2日目かけて北上した分を1日で高速で一気にかっ飛ばしたため移動距離は420kmと長め。疲れた。


肉が柔らかい
3日目行程
3日目行程

9/22(Fri.)

・疲れたので宿で程々にゆっくりしつつ朝食を食べ出発。

・少し北上し平泉の中尊寺へ。金色堂を始めいろいろと参拝。


中尊寺金色堂の覆堂 575

・宮城県、松島へ。遊覧船に乗り島々を遊覧。その後遅めの昼食に牛タンを食べた。


松島の島々

・ようやくレンタカーを返却。ちょっとゆったりしすぎたか時間ギリギリになった。
車ではこの日は120km、4日間で約1100kmの移動。長い。

・仙台駅で立て替えの精算をし、駅前のカラオケで1時間歌って解散した。コロナ以来の人とのカラオケ。4日も同じ車に乗ってたんだからまあ濃厚接触も今更ですね。

・筆者はそのまま新幹線で帰省。東北→東海道とこんなに新幹線に乗ったのも初めて。
一気に620kmを駆け抜け4日間での累計移動距離は約2000kmとなった。

4日目行程
4日目行程

結び

筆者は普段食事にはあまり頓着しないのだが、今回はいろいろと美味いものを食べた。たまにはこういうのもいいなと感じられる旅行となった。



[1]: 筆者は現在県人寮に在籍中である。基本的に学部4年間専用だが若干名は2年間延長可能なのでちょいちょい院生がいる。

[2]: インテリジェントミラーというらしい。

2020年9月12日土曜日

中心極限定理の使われ方が雑

 表題について、高校数学B「確率分布と統計的推測」の分野について議論したいと思います。

 ※数式や画像が多いのでPCモードでの閲覧を推奨します。スマートフォン版の方は「ウェブ バージョンを表示」をクリックしてください。

 高校数学での中心極限定理は「サンプル数 \(n\) が大きいときの二項分布 \(\mathrm{B}(n,p) \) は正規分布 \( N(np, \frac{p(1-p)}{n}) \) で近似できる」のような形で使われることが多いです。

 実際にこの性質を利用した問題はセンター試験にも出題されています。

 例として2017年度本試験数学②大問5では、(1)で事象の起こる確率 \(p=\frac{8}{27}\) と試行回数 \(n=152\) を求めた後、事象の起こる回数 \(W\)が38以上になる確率を求めよという問題がありました。

2017年センター本試験 数学② 大問5(2)
東進ドットコム 解答速報 から引用
 さて、誘導に沿って問題を解いてみます。
まず \( W\sim \mathrm{B}(n, p) \) [1] を正規分布で近似すると 
\[ W \sim\hspace{-.9em}\raise{1.05ex}{.}\hspace{.1em}\raise{-0.2ex}{.} \ \mathrm{N}(np, np(1-p)) \]
これを正規化して
\[ Z=\dfrac{W-{1216}/{27}}{{152}/{27}} \sim\hspace{-.9em}\raise{1.05ex}{.}\hspace{.1em}\raise{-0.2ex}{.} \  \mathrm{N}(0,1)\]
となります。ここから
\[ P(W\geq 38)=P(Z\geq-1.25)=P(0\leq Z\leq 1.25)+0.5\]
正規分布表から \(P(0\leq Z\leq 1.25)=0.3944\) と読み取れるので
\[ P(W\geq 38)=0.8944\fallingdotseq \underline{0.89} \]
[コサ]が求められます。

 ところで試行回数 \(n\) のうち起こる確率 \(p\) の事象が \(W\) 回起こる確率は \( {}_n \mathrm{C}_k p^k(1-p)^{n-k} \) で求められますよね。すなわち
\[ P(W\geq 38)= \sum_{k=38}^{152} {}_n \mathrm{C}_k \left(\frac{8}{27}\right)^k\left(1-\frac{8}{27}\right)^{152-k} \]
です。
 この値を計算してやると
\[\frac{33653006695169935368398710875490279090671133062832375432984836442909851024578153406720653472464602036893988778750761275112082009807140743185850783429484841877046240945268727009822247699465627606603232862322992279977984}{36922589523355488684862534309606828646354858539339639340108704606860278316954612223011926714496786380566924041472156813147058283837186067759425594341390772627248925636473894065900906894946778020270362243511617241359521}\]
\[\fallingdotseq 0.9114\ldots\]

 さて困りました。センター試験の模範解答 [2] によれば答えの近似値は \(0.89\) とあるのですが、誘導に従って正規分布表を使ったあとすべて放り投げて218桁の確率計算をゴリ押しして \(0.91\) と求めてしまった人は不正解になるのでしょうか?
\( P(W\geq 38)=0.91\ldots \) の方が近似値として正しいのに?
数学② 表紙
中日進学ナビ 解答速報 から引用
小数で答える場合は指定された桁数までの概数で回答することが指定されているのでこちらは厳密な数値が「\(=\)」で結ばれていてその近似値を解答欄に答えているとみなせます。

 今回の問題は最後の数式を「\(=\)」にしてしまったこと [3] と\(n\) がたった3桁しかないのに中心極限定理の近似精度を無視して答えを小数第2位までも求めさせてしまったこと [4] ですが、特に後者は今回の問題に限らず小・中・高に渡った数学教育の問題点だと考えます。
 \(\pi\) はもちろん \(3\) ではないし \(3.14\) でも \(3.14159265359\)でもありません。 \(\pi\) は \(\pi\) であって \(3.14\leq\pi<3.15\) とか \(\pi=3.14\ldots\) が「数学的に正しい」。 有効数字3桁の数、または小数第2位までの概数なのだからここまでしか求めらないし、ここまでしか求めなくて良い。1桁の概数であるとちゃんと言っていれば「円周率が3」とか「3.1」として概数計算すればいいのに、(せっかく小学4年生で概数を習っているのに)5年生では円周率で無駄に細かい小数計算をさせられる小学生が不憫です。
 「\( \log 2=0.3010 \)とする」も非常に気持ち悪い表現です。\( \log 2 \) と \( 0.3010 \) はもちろん異なる数値なので「小数第4位までの概数として一致する」という二項関係 [5] を導入していると解釈するしかありませんが、「数値として等価」の \(=\) と文脈上明らかに区別できる図形の合同や相似という同値関係には違う記号を割り当てているのに、ここでは \(\fallingdotseq\) を使わないという理由も無いでしょう。

 すこし脱線しましたが、センター試験でさえも中心極限定理の扱いが雑という話でした。我々の世代では高校数学では統計なんて全く触らないで来たという人も多いでしょうが、今後統計分野が必修化されるにつれこういう話をちゃんと扱えるようになっておく必要ができてくるのかな、と思います。

ご意見・感想・質問などは下のコメント欄かTwitterにてお願いします。



追記
 Twitterにて 問題文で \(P\) を近似値と定めているのでは?とご指摘を受けましたが「確率変数の条件を引数にとりその確率を返す表記 \(P(\bullet)\) 」って教科書で定義されてませんでしたっけ?手元に教科書がないので情報提供をいただけると助かります。



追々記 2020/09/15
 上記について、教科書を色々調べてみました。
・数学Advanced 数学B (東京書籍)(平成30年度新刊)
・高等学校 数学B (数研出版)(どの年度のものか不明)
・詳説数学B (啓林館)(平成25年度)
では「確率変数 \(X\) が値 \(k\) を取る確率を \(P(X=k)\)、 \(X\) が \(a≦X≦b\) の範囲にある確率を \(P(a≦X≦b)\) と表す。」のような記述が確認できました。
1冊だけ、
・数学Standard 数学B (東京書籍)(平成30年度新刊)
では「確率変数 \(X\) が値 \(k\) を取る確率を \(P(X=k)\) と表すと、 \(P(X=k)=~~\) 」のように一時的な宣言としてのみ使用されていました。



再追記 2020/09/24
・東京書籍 数学B(東京書籍)(平成24年度)
自分が使っていたものも調べてみましたが「数学Standard 数学B (東京書籍)」と同様定義の形では宣言されていませんでした。




[1]: 確率変数 \(X\) が 確率分布\(\mu(\theta)\) に従うことを \( X\sim\mu(\theta) \) と表記する。参考
[2]: 問題の参照元は東進だが大学入試センターからの模範解答は公開されているので違いはないと思われる
[3]: ここが「≒」であったならば「"正規分布表から求めた近似値"を問うているので0.89が答え」と言い張ってもよいのだが、「\( P(W\geq 38)=0.89\ldots \)」はどうしても誤りなのである
[4]: 中心極限定理の収束速度は高校範囲外であるので問えないし面倒なので私もここでは扱わないが、問題作成者は近似値がちゃんと近似できているのかくらいの確認を行う義務があろう
[5]: これは同値関係なんでしょうか。なんとなく推移律あたりが怪しい気がします(証明はしていない)