2021年3月13日土曜日

博士に進学します

こんにちは、雪下です。

先日、博士の入学許可書が届きました。これで、入学手続きをすっぽかしたり修士が取れなかったりしない限りは、来年度から博士課程に進学することが決まりました。(などと書き出したはいいものの、いつの間にか半月ほど経ち、博士の入学手続きも修士課程修了者の発表も終わり年度内のイベントも残すところ修士の学位記授与式くらいとなってしまいました。そういうところだぞ。)

同じ専攻・系内の進学ですが修士とは別の研究室にお世話になることになります。わりと珍しいパスだと思うのでこの機に一度これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

研究室を行ったり来たり

これまでにも私はコロッコロと研究室を移っています。ここまでの遍歴をまとめてみましょう。

B4 春学期学生実験:M研究室(低温物性・超伝導)
→B4 卒業研究:H研究室(統計物理・機械学習)
→修士:改めてM研究室に進学
→博士:H研究室に進学

落ち着きがないですね。
弊研究科はめちゃくちゃ広範囲の分野の研究室が集まっているので同じ系でもやっていることが全然違います。
それぞれで何があったのかを書いていきます。

学生実験

私が学部時代所属していた T学科は4年春学期にまずそれぞれの研究室で半年学生実験を行います。
私は高校の頃から超伝導現象に興味を持っていた&実験が好き(だと思っていた)ので超伝導実験を行うM研を志望しました。

液体ヘリウムを使い超伝導体の特性を計測する実験を行っていたのですが、何度繰り返してもまともなデータが取れません。どう見ても測定系が異常なのですがどれを取り替えても改善せず結局まともな結果が得られないまま半年が終わりました1
散々な結果でしたが学生実験を行った実験室とM研のメインの実験室では設備も違う2ということでうまく行かなかったのはたまたまやる実験が良くなかったのだと信じることにし、この時期にあった修士出願はM研に出しました。
私はまだ超伝導の実験がしたかったというのと、この時期は卒業単位数を大きく越えてバカスカ講義を取っていたので忙しくあまり深く考えず唯一知っている研究室に出しちゃったというところもあります。

卒業研究

弊学科では卒業研究は4年秋学期の半年のみです。修士はバリバリ実験系のM研に出したものの、卒業研究の志望は打って変わって理論系のH研究室に出しました。
これからずっと実験をやっていくことになるのだしせっかく流動性の高いシステムなのだから理論系の研究室を経験しておきたいなと思ったのです。

卒研ではH先生と議論し、機械学習を物性予測に役立てようという研究をしました。先行研究に毛を生やした程度でしたがもともとプログラミングやら機械計算やらが好きだったのがハマり、楽しかったです。

修士課程

修士は改めてM研に所属し、超伝導体の研究を行いました。
超伝導体の研究をしたかったのは確かでした。実際、自分のやりたい実験をやっているときは時間を忘れて徹夜で実験を続けたりしても苦ではなかったです。
しかし、結局不満のほうが大きく正直言ってミスマッチだったと言わざるを得ません。

まず、研究室の人員に対し実験装置(特に低温測定用の装置)が限られており、スケジュールがかなり状況に左右されること。
もちろん仕方ないことですが、過集中のケがある私にはノッていないときに実験をし、ノッているときに実験できないのはだいぶ調子が狂う原因となりました。

また、装置の質が悪いのかなにかが間違っているのか、作製条件がブレブレで全然再現がとれなかったこと。学生実験がうまく行かなかったのは必然だったのかもしれません。
共同研究先に一度できたこの条件の試料を提供しますという約束をした後、いざ本番試料を作ってみようとすると全く再現せず、しかし一度はできたものだから諦めることも許されないという状況が立て続き、1ヶ月ほど同じことをやり続けたことがあります。
このときはマジで心が折れて半分不登校みたいな状態になってました。

さらに、研究室のメンバーとの相性も悪かったこと。
皆さんブラック企業戦士みたいな人ばっかりで朝から晩までずっと研究室にいる(コロナが始まった後も事務に怒られるくらい出席率が高かった。ダメだろ。)ので、人のいるところだと落ち着かないしデータ解析のときくらいは自宅に居たい私は肩身が狭かったです。
こういうストイックさというか厳しさというかは外部の人にも有名だったようで、学会に行って企業の人と話していたらあ~あの研究室ね、大変でしょ。みたいな会話をして初めて知りました。なんで内部生が知らないんじゃ。
こういうリサーチが足りていなかったのは完全に適当に選んだ私の責任ですが、卒研の前に修士の研究室を決めないといけないというシステムの側に多少ならぬ恨みを抱いています。

色々と不満がありつつも1年目は積極的にコミュニケーションを取って気を使ってくださったある先輩のおかげで、2年目はコンコルド効果によって、修論提出ギリギリまで実験データがロクにないなどをなんとか乗り越え修了までこぎつけました。

博士への進学

修士後の進路について。時は戻ってM1秋頃はまだ就職する意思がないでもなかったのですが、純粋に忙しかったのと心も死んでた3ので気づいたらM2秋になっていました。
流石にもう就職は無理なのと、卒業研究のときの計算系の研究がどうしても恋しかったので(修士が無にならないよう)物性物理と機械学習を組み合わせた研究ができるような研究室を探していました。
実は修士時代にもこういう研究に手を付けてはいたのですが、「本業は実験」という方針のもと、結局深く関われず中途半端に終わってしまっていたのです。

が、既にこれからコンタクトを取るというには遅い時期だったので気後れして逆にズルズルと先送りするという最悪行動を続けていたところ、ついになんの進路も決まっていないのに何もしていないことをM先生に叱られ、寮の隣室のT君にも見ててやるからさっさとアポを取れと心配され始めたので、面識がありまだハードルが低く思われたH先生に連絡を取りました4
H先生は丁寧に関連する研究室などの情報を教えてくださり、最終的にH研究室に受け入れてくださることが決まりました。こんなヤバげな学生を引き受けてくださるH先生には頭が上がりません。

入試やら手続きやらでも色々とやらかしがありましたが、なんとか入学許可を頂き、これで春から博士課程に進学することとなりました。
機械学習の研究に手を出したりしたときに「プログラミングしてるときは目の輝きが違う」「なんでうちの研究室に来たのかわからない」「計算機に向かっているほうが合っていると思う」などと言われていたので今度こそうまくやっていけるといいなと思います。
修士時代は色んな人に迷惑を掛け倒しだったので今度こそはまっとうに生きられるよう努力します。


  1. ちなみにこの実験はこの間リベンジしました。当時と同様の測定系ではやはり全然うまく行かないので感度の良い電圧計でひたすら一点一点測定するというゴリ押しでなんとか期待する特性を測定することができました。 ↩︎

  2. 例えば極低温まで冷却して物性を測るにあたっては学生実験では経験のため2重デュワー瓶に窒素とヘリウムを直接入れてポンプで減圧するまで手動で行っていましたが、ラボでは自動で温度が設定でき定速度スキャンも楽々なPPMSという装置を使用しています。 ↩︎

  3. どれくらい死んでたかと言うと学部後半2年間で卒業単位+60くらい取ってた人間が修士では修論など含め32/32ちょうどしか取らなかったくらいです。 ↩︎

  4. これがなかったらいよいよ詰んでいました。ありがとう、M先生とT君。この歳になって叱ってくれる人がいるというのはありがたいことです。 ↩︎